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進撃の二人セゾン

どこでどうしてリンクを踏んだのか、欅坂46「二人セゾン」という曲の公式MVをたまたま見て、たまげた。なんという完成度。素晴らしい。曲も歌唱もいいんだろうけどなんと言っても、ビデオとして、いい。

神々しい感じのイントロが終わると、笑顔で軽快な「ゼンゼン前世から」っぽい歌が始まり、やがて騎士団みたいな制服が出てきて、後半、少しずつ上昇の予兆があって、肘と手首をカクカクしながら階段を昇り、いっせいに腕を振り上げ空を指差す。そこから突然始まる、狂気を孕んだ目でぐるぐる腕を振り回す激しいダンス。なんだこのプログレっぽい展開。笑顔なし。シュゴゴゴゴーッと音が聞こえてきそうな波動砲のスローモーション、逆光で跳ね上がるシルエット。軍隊みたいな整列行進。逆光で切なく宙に何かを求める指先の重なり。

この、厨二心を鷲掴みにする勇ましさのイメージは、何か見覚えがあると思ってるうちに、気付いた。制服といい、隊列といい、指先といい、これは『進撃の巨人』そのものだ。あの、背をがくんと丸めて後ろに手を振り上げるかたちは、立体機動のポーズだ。もしかしたら会議で「進撃の巨人のビジュアル、ちょっと意識してみようか」くらい言ってるのかも知れない。そうではなく、たまたま似たのかもしれない。どっちであろうが、とにかく素晴らしい。

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その、ぐるぐるダンスパートの歌詞がですね、「花のない桜を見上げたときは、満開の日を想像してみろ」というもので、これがまた痺れる。若い人、子供とか生徒とか部下とかを、桜の樹に例えている。「あんたはなんでいっつもいっつもそんなに愚図なのっ」と叱るんじゃなくて、「満開の日の君はきっと素晴らしいよ」と背中を押してあげよう、という話だ。

そして、よりビデオに引きつけて言えば、桜の樹とはメンバーひとりひとりを指すのだろう。ほら、そうして四季は巡り光が重なり折々の色を経て、いま、君たちは、こんなにも力強く咲き誇ってるじゃないか、と。その中学生を見たときに、秋元康は、その少女が勇ましいダンスを踊るところを、想像したんだと。それがありありと想像できたからこそ、欅坂46はできたんだと。想像しなきゃ夢は掴めないんだよと。

いやあ、オレは秋元康なんていう人間は全く好きじゃないが、それでも、いいものは称えたい。この重層的なメタ構造、つくづくよくできている。「セーラー服を脱がさないで」から21年、こんなものを作るとは人生わからないものだ。オレはとうとう、平手友梨奈という名前まで覚えてしまった。

by nobiox | 2017-06-23 16:24 | ├音楽 |
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