2010年 08月 29日
「暗くなるまで待って」(1967/107min.)
★★★☆……………おもしろかった。怖くはない。
ある紳士が、空港で見知らぬ女から人形を預かる。じつは人形にはヘロインが詰まっている。女は空港で敵だか味方だかの包囲を突破するために無理矢理ブツを人に押し付けた模様。紳士はカメラマンで、名前はサム・ヘンドリックス。その妻スージー(A・ヘップバーン)は、1年前の事故で目が見えない。 ヘンドリックスのアパートを突き止めたマイク、カリーノ、ロートの悪者3人組が、ヘロインをとり戻すべく人形を探すという話。この3人の作戦はスージーが盲目だということを利用してるんだけど、しかしなんだかもう、異様にまどろっこしい。まず、サムに架空の仕事の依頼をして引き離す。ひとり残されたスージーの元に、マイクが夫の旧知の友人を名乗り訪ねてくる。入れ違いにロートが「サムの不倫相手の舅」を名乗り怒鳴り込んできて暴風のように寝室を家捜しする。入れ違いにマイクが「荷物を忘れた」と言って戻ってくる。スージーの話を聞いたマイクは警察に(と偽って)電話する。刑事を装いカリーノ登場。今朝近所で発見された若い女の死体と、サムとの関係をほのめかす。入れ違いにロートがひとり二役で「サムの不倫相手の夫」を名乗って訪ねてきて、先ほどは父がご無礼なことを申しまして、とかなんとかしゃべりつつ、やはりサムの不倫をほのめかす。そこへカリーノ刑事から電話が入り、今朝発見された死体がロートの妻だとほのめかす。バカみたい。 そもそも「人形はサムの不倫の証拠であり、すなわちサムが不倫相手を殺害した証拠である」という架空のストーリーを奥さんに刷り込むことに、どういうメリットがあるのかわからない。そんなふうに思い込んだら、仮にスージーが人形をみつけても、素直に人に渡せないじゃん。それどころか誰にも知らせずに抹消しそうだ。くだらない芝居してないで、さっさと拷問して人形のありかを吐かせりゃいいじゃないの。 これ、元はブロードウェイで大ヒットした舞台劇なんだそうだ。なるほどねー。舞台という魔法の非日常空間でなら、たしかにシュールでコミカルで面白そうだ。映画だと芝居がかって、わざとらしい。芝居ではプラスになるわざとらしさが、映画ではマイナスになると言うか。 ところで人形は、階上に住む少女グロリアが無断で「借りていた」のだった。言われてみれば出入り自由なグロリアを誰も疑わなかったのは不自然なんだけど、とにかくそう判明してからの展開はよくできていてスリリングでそこそこスピーディーで仕掛けもアイデアも面白くて、絶望に追い込まれては逆転し、また逆襲をくらい二転三転する構成も素晴らしい。褒め過ぎか。すべての電球が切れた時には冷蔵庫のドアを開けると光源になるんだなあ、なるほどね。 密室で人を怯えさせて追い込むとき、ガソリンとマッチをちらつかせるのは諸刃の剣だということも学んだ。 さらに、そのグロリアというヘンなメガネと赤いセーターの子役(Julie Herrod)が、ブス可愛くってたまらない。「アグリー・ベティ」みたいと言うか、「24」でいうとクロエみたいと言うか、いかにも歯列矯正中って感じとでも言うか。グロリアぶんで☆ひとつアップ。
by nobiox
| 2010-08-29 15:30
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