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宇多丸師匠への私信01:品川さんを責めないで。

宇多丸師匠こんばんは。

Youtubeで「宇多丸が映画『サンブンノイチ』を語る」というのを拝聴しました。これがいつの放送なのかは知りませんが、アップされたのは2014年4月らしいです。映画監督としての品川ヒロシ、松本人志、ナベアツがダサい連中だ、という根幹に関して、私は宇多丸師匠に共感しております。その上で、思うところを申し述べます。

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品川氏(あるいは松本人志あるいはナベアツ)は要するに「上から目線でああだこうだ批評する通ぶった素人がウザい」わけです。それを、思うのはいいけど口に出すのはダサい、というのは大いに同感なんですが、とにかく品川氏のその感覚自体に矛盾はありません。

「批評家気取りのマニアうざい。素朴な客はオレを支持してる」、と。それは、ほとんどの飲食店主が食べログに対して抱く敵意、ほとんどの芸能人・ミュージシャン・作家・映画監督が2ちゃんねるに対して抱くうんざり感と同質のものでしょう。

「進撃の巨人監督・樋口真嗣が前田有一の映画酷評にブチギレ」という話題がつい先日ありましたが、あれなんかもまさに「批評家気取りのマニアうざい。素朴な客はオレを支持するはず」発言の典型です。品川ヒロシ、松本人志、ナベアツがダサい連中だとするならば、樋口真嗣もダサいと言わねばなりません。で、師匠は、「素朴な観客、なんてものはフィクションである」「今の客は目が肥えている」とおっしゃるのですが、果たしてそれは本心でしょうか。

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師匠は、龍三と七人の子分たちの回で「大衆」を「日頃芸人タレントとしてのたけしさんにテレビとかで親しんでいて、尚且つ、別に映画マニアとかじゃないからハードコアないわゆるたけし映画には耐性がない層」と定義し、「要は、いちばーん多い層」である、と述べておられます。いちばーん多い層は素朴な観客であり、今回北野武監督はその素朴な観客に正面から向き合い、素朴な観客をこそ喜ばせようとしているのだ、と。肯定的に。だったら、その文脈では、品川監督を肯定的に評価したっていいんじゃないでしょうか。品川監督は素朴な観客に正面から向き合い、喜ばせようとしているのだろう、というふうに。

また、アジョシの回ではこんなことをおっしゃってます。「従来、韓国映画の容赦ないバイオレンス描写が大好きなのは一部の好き者達(あるいは「猛者たち」あるいは「僕ら」)であって、一般の人に受けるのはやっぱりラブコメか悲恋ものであった」と。要は、映画の客には2種類いる、と言ってる訳です。大多数の一般人と、一部の尖ったマニアと。

品川氏がそう言ってるんじゃないですよ。師匠自身がそうおっしゃっています。そして品川氏は「一部の尖ったマニアうぜー」と言ってるわけです。そう思うのはいいにしても口に出すのはダサい、というのは大いに同感なんですが、とにかくその品川氏の感覚自体に矛盾はありません。「いちばーん多い層は別に映画マニアとかじゃないので、ハードコアないわゆるたけし映画には耐性がない」「一般の人はやっぱり容赦ないバイオレンス描写とか苦手で、ラブコメか悲恋ものが好き」と言いながら「素朴な観客なんてものはフィクションである」と主張する師匠の方が矛盾してると思うのですが。

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「近年バックトゥザフューチャーはマニアによって本格的に論じられることが多いんだけど品川さんご存知ない……?」とか、「クリスチャン・スレーターの話してんのにアレ観てないの?」とか、かなりこう、小馬鹿にした風に、じつにイヤーな感じにおっしゃってますが、品川氏に言わせれば「うるせー。ご存じねーよ、だからなんだよ。オレはマニアなんてクソだって言ってるだろうが」でしょう。

あんたが大好きなタランティーノこそ最強の映画マニアじゃん、というのはよい指摘だと思いますが、「タランティーノ映画が好き」と「上から目線でああだこうだ批評されるのが嫌い」は、なんら矛盾しません。「ライムスターの曲が好き」と「宇多丸の映画評論が嫌い」が少しも矛盾しないのと同じように。

また、僕はタランティーノという人の言動をよくは知らないのですが、彼は気に入った映画を持ち上げるのが趣味で、気に入らない映画にあれこれ言うことはそもそも少ないんじゃないでしょうか(よく知らないので間違ってたら認識を改めますが)。

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師匠は「品川氏こそが一番バックトゥザフューチャーをバカにしてんじゃないの」とおっしゃいますが、してません。どういう理屈でそうなるんですか。一般人に受ける映画の代表例として、かつ、マニアがバカにしそうな映画の代表例として挙げてるだけです。「近年のマニアはバックトゥザフューチャーをバカにしないんですけど品川さんご存知ない……?」なんてツッコミは、品川さん的には「ご存じねーよ。ああそうなんですかよかったですねえ、だからなんだよ、あ?」でしょう。

仮に私が、いちばん好きな食い物として、かつ、一般人に受ける食事の代表例として、かつ、食通がバカにしそうな食事の代表例として「吉野家の牛丼」を挙げたとして、じつは近年の食通がこぞって吉牛を本格的に論じてたとしたら、私こそが吉牛をバカにしてるということになるんですか。なりませんよ。だって、いちばん好きだって言ってるじゃないですか。この場合私がバカにしてるのは「吉牛を腐す食通気取りのアホども(という想像上の存在)」であり、「吉牛」そのものではありません。

仮に私が、いちばん好きなミュージシャンとして、かつ、一般人に受ける、かつ、音楽通がバカにしそうな音楽の代表例としてカーペンターズを挙げたとして、じつは小西康陽、坂本慎太郎ほか音楽通がこぞってカーペンターズを賛美してるとしたら、私こそがカーペンターズをバカにしてるということになるんですか。なりませんよ。だって、いちばん好きだって言ってるじゃないですか。この場合私は、「小西康陽や坂本慎太郎の見識を見直したぜ、わかってんじゃん」と言うでしょう。

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「次はお笑いを封印して本格アクションとかやったら『意外と』いいんじゃね? と思わせる程度にはやっぱいいです、そこは」みたいな提言をされてますが、善意でおっしゃってるんでしょうか悪意でおっしゃってるんでしょうか。どっちだとしてもほんっとに、やめてくださいよ。品川氏からしてみたら、次回作でお笑いを封印して本格アクション、なんて、もはや不可能でしょう。だって、そんなことしたら憎っくき宇多丸の軍門に下ったみたいになるじゃないですか。「品川監督は僕の提言を理解できたみたいですね」とか、TBSラジオで言われちゃうじゃないですか。彼は何が何でもそんなことしませんよ。ゼッタイに。何故なら宇多丸にそう言われたから。「なんでオレにそんな反発」と思うかも知れませんが、反発されて当然の人格攻撃を、してますよ。師匠は。品川氏に対して。「アジョシ研究したでしょ、こういうこと言われるとうれしいでしょ」とか。

言うまでもありませんが、番組中で読まないでくださいね。品川さんを怒らせたくないんで。


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by nobiox | 2015-08-27 22:42 | ├映画 | Comments(2) |
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