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「プラダを着た悪魔」
原作:ローレン・ワイズバーガー / 監督:デビッド・フランケル / 出演:アン・ハサウェイ,メリル・ストリープ,スタンリー・トゥッチ / 2006年
★★★★……すごくおもしろかった

素晴らしい。プロが作ったプロの映画。観ていて残念に思う点が、ひとつもない。このカット無駄に長い、とか、この絵いまいち、とか、このシーンは必要なのか、とか、この音楽が耳障り、とか、そういうことを一度も思わせない(つまり西川美和の映画にはけっこう、そう感じる瞬間が多いんだな)。どうして日本ではこの手の、軽くて軽妙でゴージャスな映画はできないんだろう。軽くて軽妙でお洒落なCMとかならたくさんあるのに。軽くて軽妙で貧乏な感じの映画もたくさんあるのに。まあ日本にはメリル・ストリープ(1949年-)がいないからなあ・・・

主役は常磐貴子か、深津絵里か、黒谷友香か、あるいは西山茉希か南明奈か、まあ可愛いければ誰でもいいとして、悪魔の編集長は日本人なら誰がやるんだろうか。八千草薫じゃ無理でしょう。野際陽子か。朝丘雪路か。大地真央か。あ、風吹ジュン(1952年-)か。余貴美子(1956年-)か。永島暎子(1955年-)か。風吹ジュンも余貴美子も永島暎子も尊敬すべき役者だが、それでもメリル・ストリープには及ばない気がする。ちなみに私がメリル・ストリープという人の偉大さを知ったのは「She-Devil」という映画からです(「She-Devil」でのメリル・ストリープはデヴィルではなく、デヴィルに翻弄される側)。

メリル・ストリープ演じる悪魔の編集長は全編を通し、一度として声を荒げない。悪魔の編集長は毎日毎日コートを着てくる。やっぱりお洒落というのはある程度寒くないとなあ、真夏はどんな格好するのかなあ、などと、考えました。
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by nobiox | 2009-07-29 20:28 | ├映画 |
「メリーに首ったけ」
監督:ファレリー兄弟 / 出演:キャメロン・ディアス,ベン・スティラー / 1998年
★★★………おもしろかった

「蛇イチゴ」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「ゆれる」。なんでこんなに辛気くさい映画ばかりわざわざ選んで観るのか、我ながら疑問に思わないでもないので、今回は楽しそうなDVDを借りてみました。でも期待ほど楽しくはなかった。「お下品ギャグ、下ネタ満載、障害者ジョークあり、動物虐待シーンありと許容度スレスレの毒気」、というような評判を聞いていたせいか、なんだ案外ふつうじゃん、という印象。

ストーリーも、たかだか「出会い」から「抱き合ってキス」までの物語で、しかも出会いの時点ですでに、なぜか彼女は非常に好意的、好感触なので、最後に「抱き合ってキス」がかなっても、感慨も達成感もほとんどない。そんなことはどうでもよく、細かいくすぐりに腹を抱えて笑えばいいのだろうが、チンポをファスナーで挟んじゃって大騒ぎ、といったギャグはお下劣というよりは幼稚な感じ。これで爆笑できるのは中学生までではなかろうか。ただキャメロン・ディアスは、たしかにむちゃくちゃ可愛い。すべてを補って余りある。このとき26歳か。

それより、ぼんやり見てたオープニングのロールにジョナサン・リッチマンの名前を発見して驚いた。えっ?! あ、そうか、この歌、この声、この節回し。え、じゃあもしかしていま歌ってるこの男がジョナサン・リッチマンなのか。20代にしか見えないが。ジョナサン・リッチマンの音楽に出会ってから30年近いが、顔なんてジャケットでしか見たことなかったし、動いてる映像は完全に初めて見た。素晴らしい。ジョー・ストラマーは死んでしまったがジョナサン・リッチマンは生きている。このとき47歳か。こんな仕事してたなんてぜんぜん知らなかった。しかもちらほら出演している。日本語吹き替え版の歌もけっこうよくて、噂によるとモト冬樹だそうだ。ジョナサン・リッチマンにモト冬樹。なんという的確な人選だろうか。もちろん、歌は吹き替えにしない方がよりよかったとは思うが。
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by nobiox | 2009-07-25 15:24 | ├映画 |
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
原作:本谷有希子 / 脚本,監督:吉田大八 / 出演:佐藤江梨子,佐津川愛美,永作博美,永瀬正敏 / 2007年
★★★★……すごくおもしろかった

この1ヶ月に観た、すごくおもしろい DVD:「蛇イチゴ」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「ゆれる」。けっこうおもしろかった映画(テレビで観た):「ターミネーター2」。まあまあだった DVD:「紺野さんと遊ぼう」。それ以下(私にとって)だった DVD:「週刊真木よう子」「紀子の食卓」「自転車吐息」。ほぼ五割か。意外に歩留まりが高い。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」。いや、これねえ、素晴らしいです。観てよかった。

チャラい放蕩息子あるいは娘が帰還して、因習的な、停滞した、淀んだ地元の空気に緊張が生じる、というありがちな設定は、考えてみれば「ゆれる」「蛇イチゴ」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の3作に共通している。帰還のきっかけが葬式、というところまで3作共通。

高慢な自信家が理不尽に君臨する、というお話も珍しいものではない。「白鳥麗子でございます!」「正義の味方!」など、特に少女漫画の世界に多いような気がするんだが、だとすると何故だろう。「なんで○○さんっていっつも威張ってんの、バッカみたい。まあいちおうちやほやしといてあげるけどね」的な感情を胸に秘めて暮らす小中学生女子の割合が、男子よりも多いのか。あるいは、男の暴君が洒落にならないのに比べ、女の理不尽女王はどことなく愛嬌があって、煙たがられる一方で逆説的に愛されているのか。

これのオリジナルは漫画ではなく、本谷有希子による戯曲だそうだ。初演は2000年で、本谷有希子は当時22歳。本谷有希子自身が自己投影されているのは高慢な姉の方なのか虐げられる妹の方なのか、興味がある。

高慢な女王様が理不尽に君臨する、というお話を実写化すると、表情や照明や音楽の使い方などでコミカルなノリが強調されることが多い。「白鳥麗子でございます!」も「正義の味方!」もそうだった(のではないかと想像する。もっとも、それらの作品はタイトルも内容ももともとがコミカルだから当然かも知れないが)。本作もどことなく全体がマンガっぽいが、ただ(タイトルが仰々しく重々しい上に、たぶんそれだけでなく、もともとの戯曲の雰囲気が重いのだろう)、表面的にはコミカルな味付けがほとんどない。ソバをぶちまけるシーンなんて、「ナースのおしごと」だったら間違いなく「宙を舞うソバ」と「それを目で追う妻の表情」をスローモーションで交互に見せるはずだが、本作は北野武的にあっさり流す。唐突な美学と言うか。それがイイ。そのおかげで漫画を超えたお伽噺とでも呼ぶべき普遍性を獲得している、なんていうのは言い過ぎかも知れないがちょっと言ってみました。何かに印象が似てると思って記憶をたどったら、乙一(おついち)という小説家(?)の『zoo1』という短編集だった。教訓めいたものが何も残らない、不思議な、残酷な、意図不明の寓話。しかも(あっさり唐突な描写を補うかのように)、劇中の妹が姉の暴走ぶりを観察しては、コミカルに戯画化して見せる。呪みちる(Noroi Michiru )、という漫画家によるその劇中漫画がまた、素晴らしく魅力的に見える。

この妹は劇中、左手で漫画を描く。佐津川愛美オフィシャルブログによると、
腑抜けどもで左で字とか絵を書いていて、他の作品では右で書いていたのですが本当は何ききなんですか?

本当は右利きです☆左利きの人って天才肌というか、そういうイメージがあって、監督がもし出来たら左利きでいきたいという事で、私もそう思ったので、練習しました。
スタッフさんにドリルみたいなのを作って頂いて、字や漫画を書くのに必要な線や曲線を練習したり。ごはんを食べるシーンもあったので、普段の食事の時も左手でご飯を食べたり。
でも左手がキーになっている訳ではないし、敢えて頑張って練習したって言わない方がカッコいいけど、実際凄く頑張った方だと思うから、結構言っちゃってる。笑
監督と私のさり気ない深いこだわりです。
ということらしい。

高慢な女が似合う若き日本人女優といえば松雪泰子が思い浮かぶけど、佐藤江梨子も素晴らしいです。連続ドラマ『相棒』で、佐藤江梨子がハゲしく我が儘で暴力的で凶悪な犯罪常習者を演じた回を見たことがあるけど、調べてみたら放送は2005年11月30日(「監禁」)らしい。吉田大八はそれを見たのかも知れない。
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by nobiox | 2009-07-20 16:50 | ├映画 |
「自転車吐息」
脚本,監督:園子温 / 出演:園子温,河西宏美,杉山正弘 / 1990年
★……………最低。さっぱりわからん

冒頭の、あぜ道だか堤防だかを滑るように走る自転車目線のカットが素晴らしく気持ちよく、おおっ、と期待させられたが、そこだけだった。執拗にリフレインされる台詞。執拗な暗いモノローグ。長回し。特に、無表情な顔の意味不明な長時間ショット。ある種の「良心的」日本映画の典型というか、とにかく、おもしろくない。
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by nobiox | 2009-07-20 15:45 | ├映画 |
「蛇イチゴ」
原案,脚本,監督:西川美和 / 出演:宮迫博之,つみきみほ,平泉成,大谷直子,手塚とおる / 2002年
★★★★★…めちゃくちゃおもしろかった

「ゆれる」ほどの評判じゃないのでそれほど期待せずに観たんだが、こりゃ凄い。面白い。これが28歳のデビュー作なのか。スゲー。びっくり。「ゆれる」だって少なくとも「スター・ウォーズ」や「ダイ・ハード」や「ジュラシック・パーク」よりもはるかに面白いけど、じゃあ「ローマの休日」並に面白いのか、と言われたら、いや、さすがにそこまでは・・・と思う。しかし「蛇イチゴ」についてはそういう留保はない。紛れもなく「オレが生涯で観た映画のうちのベスト100」に入る。オレが生涯に100本も映画を観るかどうかはわからないが。

まず話が、まあべつに画期的な新機軸ではなく、ありがちなお話だが、面白い。人ってね、100%の善意とか100%の悪意って、そうそうないと思うんですよ。自分のこと考えても、善意のつもりだったけど、よく考えるとウラのウラのウラに1%の悪意が混じってたのかなー、って思ったりとかね、みんなそういうグレーゾーンで生きてると思うんですよ。そういうところを描きたいな、と。西川美和はNHKの「トップランナー」でそんなことを語っていた。まさにその通りのお話。

その通りのお話だとしても、同じ話でも語り手次第で面白く聞こえたりどうでもいい話に聞こえたりするものだ。この話をどういう順序で語ろうかという設計図、つまり脚本が素晴らしい。さらに、どんなに素晴らしい脚本でも撮り手次第でぜんぜん違う映画になる、のか、ならないのか、私は知らんけど、何かが素晴らしい。この、「何か」とは、何でしょうね。カット割りのリズム? 構図? ボンクラな私にはよくわからないんだが、観てて何故だか気持ちいい。小津安二郎みたいというか。いや自分で言ってて自信ないけど。

カット割だの構図だのを語れるほど映画通じゃないんだが、そういう素人の感想としても、キャスティングと演出がキマッている。宮迫博之という人は芸達者な部分が目立って何の役をやってもいつもどこかがわざとらしい。NHK特集「沸騰都市」のナレーションもわざとらしい。と、思うんだが、その宮迫博之が「わざとらしい、いんちき臭い、すべてが信用できない、如才ない、どんなピンチも口八丁で平然と乗り切る詐欺師」の役で、ものの見事にハマっている。阿部サダヲふうなインチキ臭さというか。「イケメンとして定評あるが何の役をやらせても台詞は棒読み」の速水もこみちにロボットの役をやらせたらバッチリだった、という故事を思い出した(速水もこみちがロボットの役をやったドラマと「蛇イチゴ」のどっちが先かは知らない)。

手塚とおるは登場シーンは多くはないが、強烈。先日コメント欄で教えてもらった通り、ほんとうに気持ち悪くて、面白い。素晴らしい。先日「ふつうに『味のある役者』」になっただなんてトンチンカンなことを書いてしまって申し訳なかった。やはり怪物だ。モンスター・ペアレントとかモンスター・ペイシェントという言葉があるが、この映画での手塚とおるは、何だろう、「モンスター・フィアンセ」か。

「紀子の食卓」では孤独なおっさん役で出てたけど、カメラ目線で長台詞をえんえんと語る「喫茶店の男(古屋兎丸という漫画家がやってた)」こそ手塚とおるにやらせるべきだったのではなかろうか。
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by nobiox | 2009-07-14 19:06 | ├映画 |
「ゆれる」
原案,脚本,監督:西川美和 / 出演:オダギリジョー,香川照之,真木よう子
★★★★……すごくおもしろかった

東京でカメラマンとして成功したチャラいノリの弟にオダギリジョー、地元で家業のガソリンスタンドを継いだ実直で腰の低い兄に香川照之、上京を夢想しつつ田舎にくすぶるオダギリジョーの元カノに真木よう子。兄弟の父に伊武雅刀、叔父に蟹江敬三、真木よう子の同僚のガソリン店員に新井浩文。そう聞くだけでどんなタッチの映画か想像つくでしょう。その想像通りの重い映画なんだが、で、ありつつ、エンターテインメントとしてちゃんと面白いところが素晴らしい。

良心的な映画とか、意欲あふれる映画とか、志の高い映画とかは日本映画界にたくさんある。やたらに使われる長回し、やたらに挿入される意味不明な間。暗いトーン、ぼそぼそした台詞。どれもこれも退屈だ。オレが観たいのは面白い映画だ。「ゆれる」は希有な達成だと思う。まあ、年に数本というペースでしか映画を観ない人間がそんなこと言う資格はないんだろうが。

音楽は全編カリフラワーズというバンドだそうで、ファンキーと言うんだろうか、個人的にはあんまり合ってないように思いました。
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by nobiox | 2009-07-13 03:07 | ├映画 |
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