プロ野球の育成能力は非常に低いらしい。
プロ入りを期待されるほどの高校球児をひとり想像していただきたい。彼自身の最終目標もプロ野球選手だと考えていただきたい。高校生活最後の甲子園も終わり、さて高卒でプロ入りか、あるいはいったん大学進学かあるいは社会人野球か、と思案する、と考えていただきたい。

本人が「オレの力なら間違いなくプロで即戦力」と確信していれば、何も悩むことはない。すぐにプロに行けばいい(行ってみたらぜんぜん通用しなかったとしたら後悔するかも知れないが、まあそれはそれとして)。悩むのは、そこまでの確信はなく、「うまくいっても数年は修行(という可能性もある)」と考えている場合だろう。この場合、「育成機関として、プロと、大学または社会人と、どっちが優秀か」という問題になる。



一般に、プロでやる意志が本気で固まっているならプロ入りの方が効率がいい、と考える人が多いようだ。だって最終目標がプロってことは、プロが一番優秀、ってことなんだから、優秀なとこで鍛えられるのが一番いいに決まってるではないか。ふつうはそう思う。

しかし『見物人の論理』の「プロ野球に二軍は必要か。」という記事を読むと、かなり考えが変わるハズだ。

 今週読んだ週刊ベースボール11/28号の石田雄太の連載コラムと、野村克也著『野村ノート』に、「プロ野球は高卒選手を育てていない」という同じ問題が指摘されていた。

 石田は、いわゆる「松坂世代」を例にとって「あの年、松坂大輔と同じように高卒でプロに飛び込んだドラフト3位以下のピッチャーは(中略)11人いたが、一人もモノになっていない。その一方で、大学、社会人を経由してプロに入ってきた和田毅、杉内俊哉、久保康友、木佐貫洋らの活躍ぶりは言うまでもない」と指摘する。モノになっていない高卒組は、石田が例にとった下位指名の投手だけではない。1位指名の選手にしても、阪神の藤川は7年かかってようやく主力になったが、他に1位指名された古木、実松、吉本、石堂、東出らは、7年目の今年も主力選手とは言えない。これほどまでに枕を並べて討ち死にしているようでは、球団ごとの巧拙以前に、プロ野球の二軍の仕組み自体に問題があると考えた方がいいのかも知れない。

 イースタン・リーグの年度別タイトルホルダーを見ていただけば(この表は熱心な個人ファンの方が作ったもので、イースタンにはオフィシャルサイトすら存在しない)、イースタン・リーグのタイトルホルダーの中で、一軍で活躍した選手がほとんどいないことは明白だ。昨年イースタンで首位打者をとり、今年はセ・リーグの首位打者となった青木などは例外中の例外である。二軍で活躍したところで一軍とはほとんど関係がない。


意外にも、同世代の選手を較べると「高卒即プロ組」は分が悪いのである。理由はともかく、現実にそうなんだからしょうがない。まあ2006年現在、杉内も久保も木佐貫もどうなのか、という感じではあるが、それでも全体としては、高卒プロ組より健闘してるのではなかろうか。



孫引きだが、『野球小僧』に中日・中田スカウト部長のインタビューが載っているらしい。「ごく単純に20年間野球をやろうとしたら、高校生の方が圧倒的に確率は高い。プロに早く入って来られますから」

嗚呼、アホ丸出しの発言だ。としか思えない。中日ファンとしてはショックだ。大学進学組だって大学で野球に明け暮れるんだから、単純に野球をやる期間を較べるなら、「プロで20年」やるのも「大学で4年、プロで16年、合わせて20年」やるのも同じじゃないか。

中田スカウト部長が言いたいのはたぶん、「プロで20年間野球をやろうとしたら」だろう。何故、データも示さずにこういうことを言うのだろうか。現在が2006年だから、今年プロ20年目を迎えるには、1986年以前のドラフトで指名されている必要がある。ドラフト制度発足は1965年だ。65年から86年までに我がドラゴンズに入団した高卒組はのべ○人、うち現役を20年続けた例は○人、割合で言うと○パーセント。大学または社会人経由はのべ○人、うち現役を20年続けた例は○人、割合で言うと○パーセント。スカウト部長が発言するならそのくらいの数字は挙げていただきたい。



それで、仮に「20年現役」が高卒組の方に多かったとして、それが自慢になるかというと、ならない。

太郎と二郎という一卵生双生球児を考えよう。太郎は高卒でプロ入りして20年間プロ生活を続けたとする。二郎は早稲田大学経由で四年後にプロ入りして20年間プロ生活を続けたとする。このケースで、「プロも早稲田も育成能力は同等」と言えますか。言えません。太郎は38歳で引退だが、二郎は42歳で引退だ。二郎の方がよい選択をしたと考えられる。つまり、高卒組にプロ生活4年のアドバンテージがあるのは当たり前だから、それを差し引く必要がある。育成能力を問うならば、比べるべきなのは

・「高卒でプロ入りして20年間プロ生活を続けられる確率」と
・「大卒でプロ入りして20年間プロ生活を続けられる確率」はどっちが高いか

ではなく、

・「高卒でプロ入りして20年間プロ生活を続けられる確率」と
・「大卒でプロ入りして16年間プロ生活を続けられる確率」はどっちが高いか

なのだ。簡単に言えば「何歳までプロでやれたか」で比べればいい。高卒即プロ入りで、例えば7年でクビになるのと、大学経由でプロ入りして3年でクビになるのとは同値と評価すべきであって、「前者の方が4年も長くやれた」なんてのはナンセンスでしょう。

そういう評価基準で比べた時にも、「高卒の方が圧倒的に『何歳までプロでやれたか』指数は高い」とか言えるのだろうか。中田スカウト部長なら簡単に調べられると思うので、もし中田スカウト部長がこのブログをお読みになったとしたら、メールいただければ幸いです。
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by nobiox | 2006-09-18 02:52 | ├野球 | Comments(4) |
Commented by 念仏の鉄 at 2006-09-19 03:23 x
>高卒即プロ入りで7年でクビになるのと、大学経由でプロ入りして3年でクビになるのとは同値と評価すべきだ。

この場合の両者の総収入はどちらが上なのでしょうね。大卒の方が初任給(というか年俸)が高いし契約金も高いので、一軍での通算成績が同程度なら、トータルでは大差ないかも知れません。それこそ中田スカウト部長に質問してみたいものです(笑)。
Commented by nobiox at 2006-09-24 18:34
佐藤亮太23歳が1000万で、高江洲拓哉19歳が500万って、
ともに実績ゼロということを考えると、ちょっと差があり過ぎじゃないのか、
とか思いますね、なんとなくですが。
http://dragox.jpn.org/2006/_dwdgs.html
Commented by 本宮真二 at 2007-03-22 15:58 x
ドラフト問題でほんと不愉快の思いをしているのは小生だけではないですね。西武意外にも裏金をやっているところは広島意外ほとんどでしょう。広島は金がないからできないけど・・・とにかく膿をこの際しっかり出して信頼回復をしてほしいです。
Commented by 本宮真二 at 2007-03-22 15:58 x
ドラフト問題でほんと不愉快の思いをしているのは小生だけではないですね。西武意外にも裏金をやっているところは広島意外ほとんどでしょう。広島は金がないからできないけど・・・とにかく膿をこの際しっかり出して信頼回復をしてほしいです。
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