欧羅巴陰毛事情 2 - むだ毛のない肌、欧州男子の常識
後記:◉1:欧米では毛ジラミが絶滅に向かっている。◉2:理由は陰毛を処理する女性が(さらに男性も)増えたから。◉3:増えた理由はテレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の中で、サラ・ジェシカ・パーカーがブラジリアンワックスで脱毛する、というエピソードがあり(2000年放映)、それが欧米の女性の脱毛指向に決定的に市民権(特別なセレブ、あるいはポルノ女優だけでなく、一般人のツルスベもアリだという)を与えたのである。以上3点とも、イギリス皮膚科医会(British Association of Dermatologists)の見解。だそうです。2013/7/8 の「バイリンガルニュース」でマミちゃんがそう言ってました。

彼女の私見では「日本の女のコはほぼ100パーセントが下の毛生やしっぱなしのジャングル状態。温泉とか行くともうほんと、トラウマになるくらい。個人的にはかなりショッキング。逆にこっちの方が恥ずかしい」(って、あんたはどこで育ってどういう処理してるのか言ってくれないと、なに言ってるのかよくわからない)。「逆に日本は腕の毛はすごい気にするけど、アメリカとかだったら有名な女優でも腕の毛生えまくり。普通に生えてる」「脇毛? あー、ヨーロッパもけっこうねえ、あの、スペインとかも、きれいな女の人でも意外と脇毛そのまんま生えてたりして、きゃ、って思う」「毛事情は国によって大きく違う」だそうです。後記終わり。

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Tom Wesselmann: "Bathtub 3" 1963


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Tom Wesselmann: "Great American Nude #92" 1967
いずれも、脇毛は剃ってて陰毛は生えてる。



以下2枚は1992年公開の映画「エイリアン3」の導入部。
宇宙船で遭難したリプリーは、小惑星「フューリー161」の医務室で意識を取り戻す。
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坊主頭の医師:「髪を剃らせてもらう。ここじゃ毛ジラミがヤバいんでね」
(フューリー161の住人は全員が丸坊主なのである)
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「後でバリカンを渡すから、下の方は自分でやってくれ」
1992当時のアメリカでも、男女とも陰毛はあって当たり前、という前提が感じられる。




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以前「欧羅巴陰毛事情」という記事を書いたんですが、その後、今年5月3日付けの朝日新聞に「むだ毛のない肌、欧州男子の常識」という署名記事が載った。書いたのは朝日新聞の玉川透記者、前ウィーン支局長。素晴らしい記事だ。かつての週間文春の「[香川] [本田] 両エースは何故「下の毛」を剃っているのか」なんていう浅い記事とは比較にもならない。従来も男の陰毛についてのまとまった考察(というかデータ)というものは多少は存在したが、脇毛についての突っ込んだ調査を見たのは初めてだ。間違いなく「玉川レポート」として後世に語り継がれるであろう。

「欧羅巴陰毛事情」を書いた時点では「西洋の男は陰毛を優先的に剃って脇毛を剃らないのか、なぜだ」という疑問を持っていたのですが、玉川レポートによるとこれは疑問自体が的外れで、実情は脇毛の方が優先的に処理される(べきだという女子による同調圧力が存在する)らしい。「脇毛ボーボーの男は絶対無理」「彼氏がそんなだったら別れる」とまで言われている(2013年現在)。

脇毛を剃ってる白人メンズの動画も、まとめてみっつ発見した→イケメンうっとり英会話

この、宝石のような玉川レポートは、導入部だけなら「朝日新聞デジタル」で誰でも読める。朝日新聞デジタルに会員登録(無料だが、メチャクチャ面倒くさい。朝日死ね)すれば全文読める。登録したくない人でも日本在住であれば、ご近所の図書館に行けば新聞か新聞縮刷版で全文読めるはずだ。2013年5月3日の朝日新聞です。興味ある方はぜひ全文をお読みください。

ここにもできれば全文転載したいけどそこは我慢して、記事中、事実として挙げられている部分だけを箇条書き的に列挙します。




●パナソニックが2013年3月に発表した調査:
ドイツ人男性の62%が脇毛を処理している。
日本人男性の10%が脇毛を処理している。
「処理」の定義をはっきりさせずに「あなたは脇毛を処理していますか?」という調査やっても意味ないと思うの。「オレは毎朝デオドラントクリームを塗り込んでるからイエス」と答える人と、「デオドラントクリームは使ってるけどそれを処理とは言わんわなあ。だからノー」と答える人が混在しちゃうじゃないか。日本人男性の10%が脇毛を剃ってるだなんて到底信じられないので、「処理」の意味がいろいろに解釈された結果じゃないかと思う。

そう言えば誰だったか、日本人の男子水泳選手が体毛について語るのをテレビで見たことがある。誰だったか忘れたけど北島康介より前の世代の選手。「やっぱ水の抵抗を少しでも減らしたいから、オリンピックとか、大事な試合の前には全身剃りますよ。剃ってもらう人も決まってて。腕とか脚とか背中とか全部。え? 脇毛ですか? 脇毛は剃らないですね」と言ってました。
●玉川透記者(朝日新聞)によるマルセル・グエンインタビュー:
ベルリン郊外で合宿中のマルセル・グエン選手(25歳/ドイツ)ロンドン五輪銀メダリスト:「脇毛だけじゃなく手も脚も全部剃ってる。欧州では常識じゃないの。ウチムラ? ハハ、航平・内村の脇毛はロンドンの時チーム内でも話題になってたよ」
 むだ毛はデリケートな話でもある。取材に応じてくれたグエン選手は、身長167センチ、体重60キロ、芸能人のような小顔。そんなイケメン銀メダリストに「『全部そる』とは、あそこの毛もか?」と臆面もなく尋ねた。のりのいいグエン選手もさすがに「え……」。広報担当からも待ったがかかった。
二枚目系に下ネタはタブー、という暗黙のルールはドイツにも存在するようだ。貴重なレポートだ。進撃の巨人におけるイルゼ・ラングラーのノートのように。

しかし一流アスリートの常識は一般人の常識と乖離してるかも知れない、と考えた玉川記者は、一般の男性にも聞いてみるべく、「知己を頼って、音楽の都ウィーンに飛んだ」。いや、そう書いてあるから。無知なわたしはこれを読んで「音楽の都ウィーン」はドイツにあるのかと思い、ググってようやく、ああ、オーストリアね、と知りました。「一般の男性にも聞いてみるべく、ベルリンからウィーンへ」。ドイツには一般の男性がいないのだろうか。まあ、前ウィーン支局長だからウィーンに人脈があるのはわかるけど。
●玉川透記者による一般オーストリア人男性1名(32歳/学生)へのインタビュー:
5年前、バスケット仲間に勧められて全身の体毛を剃った。はじめは抵抗感もあったが、次第に「生まれ変わったような快感」が病みつきに。素肌がすれる感覚がまたいい。今では数週間おきに浴室にこもり、約40分間むだ毛と格闘する。尻など見えない所は鏡を立てかけ、確認しながらカミソリで入念に。生えてきた新しい毛のチクチクが不快で、また剃る。もう戻れない。まるで麻薬です。
アスリートは特殊かも知れないから一般人に話を聞こう、というのがウィーンへやってきた理由なんだが、それにしてはずいぶん特殊な(ように思える)サンプルをひとつだけ採取して終わりとか、この辺りはちょっとよくわかりません。

●玉川透記者によるウィーン街頭リサーチ(対象は15~83歳の女性20名):
内村航平とマルセル・グエンの両選手のガッツポーズ写真を見せて「違和感がないのはどっち?」と質問。結果は20対ゼロでグエンの圧勝。理由は「清潔感がある」「見た目がきれい」。ウチムラの脇毛は「臭そう。彼氏なら別れる」(15歳)、「脚の毛はいいけど、脇は絶対だめ」(29歳)。「何でも多すぎはダメ。毛がなくても、男のワイルドさは伝わるものよ」(83歳)。
一方陰毛については、年代により温度差がある。10~20代のほとんどが「彼氏には剃って欲しい」。30代以上はおおむね「そこまで求めない」「陰毛はむしろセクシー」。主婦のシシーさん(50)は「19歳の息子が全部剃るよう彼女からプレッシャーをかけられ悩んでいる。今の男は女の言いなりだ」と嘆く。

●玉川透記者によるバーデンのサウナ実態現地調査:
ウィーン郊外の温泉保養地、バーデンにて。男女共用のサウナは全員すっぽんぽん。剃ってる人は案外多くない。というかブロンドの毛は目立たない。常連のペーターさん(58)の意見:「見た限り、同世代の半分は剃っていると思う。俺も剃ろうかな(笑)」
バーデンのサウナの件は脇毛のことか陰毛のことかはっきり書いてないが、「あれれ? あそこの毛が濃くないぞ。恐る恐る1人に声をかけた」とあるので、たぶん陰毛のこと。上の Tom Wesselmann の絵にあるように、髪が金髪でも陰毛は黒い、という人は多いんじゃないかと思ってたけど、玉川記者の見聞ではそうでもないのかも知れない。とにかく、はっきりわかるように書いてないので、はっきりわからない。

●ライプチヒ大学(ドイツ)の研究チームによる2009年の調査:
18~24歳の男性の約35%が体毛を定期的に手入れすると答えた。そのうち、脇と局部がいずれも約75%。理由は「衛生的」(66・5%)、「美しい体」(49・5%)、「よりよい性行為」(25・5%)。サンプル約2500人。
「欧州では常識」と言うにしては、35%ってずいぶん低い数値ですね。まあ、「手入れ」の定義をはっきりさせずに「あなたは体毛を定期的に手入れしていますか?」という調査やっても意味ないと思うんだが、しかし、仮に「処理」と「手入れ」が同値だとして、「体毛」と「脇毛」が同値だとして(無理があるけど)、パナソニックによる調査とライプチヒ大学による調査が同程度に信用できると仮定すると(あと年齢層のことを無視していいと仮定すると)(あとドイツとオーストリアは似たようなものだと仮定すると)、2009年には35%、2013年には62%と、この数年で処理派が大躍進した、ということなのかも知れない。

●ライプチヒ大学の2009年の調査に携わった精神科医ディアク・ホフマイスター氏によると:
フランスやイタリア、スペインでは丈の短いスカートとタイツがはやった1920年代ごろから女性の脱毛が盛んになった。しかし、ドイツはなぜか取り残された。一説には、ナチス独裁下でヒトラーが体毛に関してナチュラル派だったのが理由、ともいわれる。その後、60 - 70年代のヒッピー・ブームの自然派指向が無駄毛をさらに延命させ、ドイツ女性が本格的に脱毛するようになったのは80年代ごろから」
「剃ったり、生やしたり。その時代で理由は様々だが、無駄毛の盛衰は古代から繰り返されてきた。根底には、自然をコントロールしたいという欲求と、仲間と同じじゃないと安心できないという欲求がある」
つまり「ブリーフとトランクスはどっちがイケてるか」「レギンスとスパッツとトレンカは呼び方としてどれが今っぽいか」などと同じく、体毛に関するトレンドもしょっちゅう入れ替わる、と。

「ヒッピームーブメントによるナチュラル指向」というのはなるほどですね。パティ・スミスの脇毛はそういう流れで解釈すべきものなのかも知れない。まあ、そうだとしてもパティ・スミスの脇毛はナチュラルにブロンドなので、ナチュラルに黒い脇毛の日本人がそのまま真似ると、パティ・スミスとはだいぶ違う印象になる。残念だが、そういうものだ。もしかしてナチュラルではなく、ビールか何かで脱色してるのかも知れないけど。
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Patti Smith Group "Easter" (1978)。今見るとこのショットは、いわゆる「パイスラッシュ」を先取りしてますね。

●玉川透記者による出所不明情報:
すでに紀元前3千~4千年ごろには、地中海周辺などで脱毛の習慣があったといわれる。当時は、石灰やでんぷんをペースト状にした脱毛剤、毛を挟んで抜くひもなどが用いられたという。古代エジプトの女王クレオパトラも脱毛の愛好者だったようだ。中世にも、脱毛した男女の絵画や彫刻が見つかっている。
●玉川透記者による脱毛ショップ調査情報:
ドイツの「Wax in the City」は8年前、ベルリンに女性専門の脱毛店として開業したが、最初の客は男性だった。今やオーストリアやスイス、アイルランドに計18店舗を展開。どの店も男性客が15~20%を占める。社長のクリスティーン・マルグライター(49)いわく、男性の脱毛熱のきっかけは2000年代のメトロセクシュアルブーム。「ドイツの女性が本格的に脱毛するようになったのは80年代ごろからなので、ドイツ女は脇毛フサフサ、というステレオタイプがある(あるいは最近まで存在した)」
「ただ、これは決して『ボーボーは遅れている→未来はテュルン』、というようなリニアな話ではない。欧州で今、無駄毛処理に熱心な男性は20~30代。10代のトレンドはすでに、ワイルドな毛深さに移りつつある」


●玉川透記者による出所不明情報:
1990年代後半からネットで流通した欧米ポルノも影響を与えたとされる。出演する俳優の多くは男女とも局部に毛がない。ヘアヌードなど毛が売り物になる日本とは大違いだ。
ここはかなり浅いんじゃないかなー。この説明じゃ「日本人は陰毛好きなのでAVでも毛が売り物になる」かのようだけど、たぶんそれは原因と結果が逆だ。「日本のAVではみんな生えてるから、日本人は生やしてる」「欧米のAVではみんな剃ってるから、欧米人は剃る」のではないか。初歩の段階でAVで性の作法を学ぶ若者は多いだろうし、AVの影響は要因として非常に大きいんじゃないかと思う。もしかしたら最大の要因かも知れない。

なぜ日本のAVではみんな生えてるのかと言えば、日本では性器をモロに写した画像が禁じられているからだ。欧米では撮っていいから、「毛を排除してもっともっとモロに撮ろう」という指向が生まれる。日本ではモロに撮れないから、「せめて毛を撮ろう」という指向が生まれる。

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あとそういえば、「イタリア女は脇毛ボーボー」というステレオタイプを聞いた記憶がある。空港にて:「お父さん、あれはどこの飛行機?」「ん? あれはアメリカだよ。機体が太っちょだから」「じゃあ、あれは?」「日本かな。眼鏡かけてるから」「じゃあ、あれは?」「あれはアリタリアだよ。見てごらん、主翼の付け根に毛が生えてるだろ」という感じのジョーク。

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あといつも思うんだけど、どうして文系の文章自慢の人って、わざとわかりにくい順番にデータを「散らす」の? ライプチヒ大学で聞いたことはライプチヒ大学で聞いたこと、脱毛ショップ社長が言ったことは脱毛ショップ社長が言ったこと、って具合にまとめてくれた方がわかりやすいと思うんだけど。書くのだってその方が楽でしょう。わざとわかりにくい順番で説明するのは「ユージュアル・サスペクツ」をはじめとして映画や小説では常道だけど、レポートではやめて欲しい。新聞の短期集中連載とか読むと、倒置法というのか倒叙法というのか、わざとわかりにくい順番で書き出す文章ばっかりで、あれ気持ち悪いよ。金子達仁もそうだ。

いや、たまーにならいいんです。異常に倒叙法の確率が高いんだよ、新聞の短期集中連載とか、金子逹仁とか。いつの話か言う前に「暑い日だった」で書き出すみたいな。どこでの話か説明する前に「涼やかな風が吹いていた」で書き出すみたいな。誰の話か書く前に「男はカウンターで、美味そうに鳥串を頬張った」だとか。誰もが競って倒叙法、みたいな。倒叙法で書かないと死んでしまう病気なんです、みたいな。沢木耕太郎の影響だという説を聞いたことがあるけど、どうなんだろうか。僕は柴田錬三郎の影響じゃないかと思ってるんだけど。
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by nobiox | 2013-07-06 23:24 | ├自分用メモ |
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