「ガタカ」(1997/106min)
 TSUTAYA で DVD を返却する時、カウンターで整理中の DVD の山に「ガタカ」を見かけた。ジャケットではない。ジャケットから抜いた半透明のケース。ケース越しに見える DVD の盤面にカタカナで「ガタカ」の文字。最近その存在を知り、気になっていた映画だ。
「あ、今そこに『ガタカ』あったでしょ、それ借ります」
「え?」
 お兄さんは怪訝そうな声を返した。
「え?」じゃないだろ、今の今だよ、いやその山じゃなくてこっちの、上から2、3枚目、ほらあった。
「あーっ、と……………………、『ハゲタカ』ですねこれ」
 僕たちは顔を見合わせてぷっと噴き出し、長年の友人同士のように笑った。

・・・と、いう事件を経て、観ました。いやー、面白いわ。しかし納得いかない点がたくさんある。

ドアノブを触っただけで遺伝情報がすべてバレる、という設定が出てくるけど、あれは要らないんじゃなかろうか。いろいろと涙ぐましい努力が描かれるけれど、なるほどこれだけ徹底的にやれば「ドアノブ触っただけでバレるような世界」でも騙し通せるかも、と思えるまでの説得力はない。だいたいドアノブ触っただけで全部わかるなら、血液チェック要らないじゃん。毎日毎日キーボードを徹底的に掃除する社員を、会社側は不審に思わないのか。掃除終ったらちょっとそのミニクリーナー貸してくれんか、検査するから、とか言われないのか。「睫毛を落とすなんて注意不足だ」という台詞があるけど納得いかない。どんなに注意を払っても体毛の剥落が100パーセント防げるとは到底思えない。心臓に欠陥があるアイリーンがどうして適合者なのか。彼女の心臓の問題を会社は把握しているのかいないのか、どっちだとしても不自然だ。医学が発達したため血液検査と尿検査だけしてればその他の健康診断はいっさい不要、という設定なのかと思ってたら、ランニングマシーンのとき心拍数測ってた。心拍数計測があるならやっぱ他の臓器も健康診断くらいしそうな気がするけど。ヴィンセントとユージーンの人相の違いを、アイリーンはひと目で気付くのにアントン刑事はどうして気付かないのか(アントンは会社でヴィンセントの顔を認識してなかったんだっけ。そんならなんで最後に気付いたんだ?)。

以上はすべて「あんなんでバレないとは思えない」という疑問だけど、他にもある。アントンはどうして最終的に兄の不法就労を見逃すのか(ヨメは「水泳勝負でまた負けたから」だと言うんだけど)。まあそれはどうでもいいか。情にほだされて心が動いたのだと考えておこう。しかしだ、そもそも1企業が毎日毎日1ダース以上のロケットを打ち上げてる時代に、「超エリートでないと宇宙に行けない」という設定自体が馴染まないんじゃないか。スーツ姿のままで土星まで行けるんだったら非凡な心臓も非凡な身体能力も要らないじゃん。そんな時代に「土星に向けて旅立ったから人生の勝者」みたいな感動的エンディングっておかしくないか。せめて「土星に行って何をするのか」について、なるほどそりゃスゲーわ、と思わせてくれる設定が必要じゃないか。ちなみに僕は右利きだけど小便するときに使うのは左手です。

と、いうように、いくつかは作品の根幹にかかわる問題だと思うけれども、それでもそのせいで台無し、と感じないのが不思議だ。納得いかない点は多々あるけれどそんなことはどうでもよく、大層面白かったです。「手塚治虫が考えた未来+ロシア・アヴァンギャルド+未来派」みたいなレトロフューチャーで静謐なビジュアルと、それにばっちりハマるイーサン・ホーク、ジュード・ロウ、ユマ・サーマンのルックス。特にユマ・サーマンの変な未来派な服。ブレードランナーとは全く違うタイプの未来を発明したというだけでも素晴らしい。
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by nobiox | 2012-10-30 15:51 | ├映画 |
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