「 インビクタス / 負けざる者たち」(2009年アメリカ/132分)
★★★★★………感動しました。

ラグビーの南ア代表チームが強くなり、自国開催のW杯で奇跡の優勝を遂げた、という実話の映画化。しかし強くなった理由は「その気になる」「その気にさせる」のみで、それ以上の具体的な強化策はいっさい描かれない。究極の精神論。それを物足りないと思う人は多いかも。

監督クリント・イーストウッド当時79歳が全体を通して描くのは、「魔法のチカラ」だ。ネルソン・マンデラが、チームに魔法をかける。まずキャプテンと面会し、「頑張って」と励ます。フィクションだったらこんなこと、思いついても書けませんよ。恥ずかしくて。だけどいいんです。実話なんだから。

現実の面会では「頑張ってくれ」的なことも言っただろう。けど映画の中では、はっきり言わない。ただ、27年に及ぶ獄中生活で私を支えたのは、ある詩句だった、という話をする。困難に立ち向かうとき、歌が大きな力になる、この国は今、それを必要としている、とか語る。それだけ。ポエムだの歌だの、屁の役にも立たない、無力なものだ。だがそういうものが時として、チカラをくれる。大きな困難に立ち向かうときこそ、それが必要だ。だからこそ今、この国には君たちが必要なんだ、と。

その後もマンデラは、あの手この手でチームに魔法をかける。はぁ? そんなんで効いちゃうわけ? というのばかりだが、説得力がある。何故なら激動時だからだ。白人支配が崩れ、「富裕層の象徴だったお前らなんか全員投獄な」という可能性すら、もしかしたらあったチームを、その黒人大統領が、力になってくれと励ます。それが魔法となって、チームを動かし、人種の壁を崩す。最後には最強の敵を倒すために、声を揃えて新国歌まで歌う。それがチカラになる。強化の具体的な理由がないからこそ、魔法のチカラの魔法性が際立ち、感動的だ。

もしかするとこれは、「映画って何かの役に立つの?」という問いに対するイーストウッドなりの回答、なのかも知れない。屁の役にも立たない無力なものの効能を説得力を持って描いた作品として、漫画とか音楽とかデザインとかスポーツとか手品とか映画とかの「虚業」で食ってる人が観ると、特に感動すると思う。
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by nobiox | 2012-08-16 14:45 | ├映画 |
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