「グエムル」
監督: ポン・ジュノ
キャスト: コ・アソン(女子中学生), ソン・ガンホ(冴えない父), パク・ヘイル(元・民主化運動の闘士), ペ・ドゥナ(魔弾の射手/銅メダリスト), ピョン・ヒボン(老賢者) / 2006年
★★★………おもしろかった

ネタバレです。






















1)白昼いきなり怪物登場→大暴れ→姫がさらわれる
2)冴えない一家が姫を奪還すべく、怪物の巣を探す
3)政府と米軍は怪物を瞬殺すべく、エージェント・イエロー作戦を準備
4)怪物は姫を咥えて巣を出て、上記作戦渦中へ登場
5)イエローを浴びて怪物瀕死→父が口中から姫救出
6)何故か怪物復活、火炎瓶使いと射手の活躍で倒す

という話。エージェント・イエローというのは、米軍が持っている対テロ用の恐るべき化学兵器。米軍がベトナムで使った枯れ葉剤のコードネームが「エージェント・オレンジ」だったそうで、「エージェント・イエロー」は、それを踏まえての当てこすりらしい。

1から6のうち、時間的に大半を占めるのは「2」だ。したがって1行で要約するならば「冴えない一家が怪物の巣を探す映画」と言える。ところが、怪物は何故か結局姫を咥えて巣を出て来て、まさに米軍が待っているその場所へ、まさにそのタイミングで上陸し、エージェント・イエローを浴びて瀕死のゴキブリみたくなり果て、そのおかげでその場所で姫の奪還となる。つまり展開上「2」の全体が、ほとんど全く要らねーじゃん、巣カンケーねーし、なんだそりゃ、ということになっている。残念だ。

4→5もむちゃくちゃご都合主義でどうしようもないが、その後の、5と6のつながりもかなりおかしい。6は漫画的ケレン味に満ちた、じつに格好良いシーンなので、これを撮りたい心理は当然よくわかるんだが、さっきまで瀕死でひっくり返っていた怪物が、まるで5が存在しなかったかのようなベストコンディションで、まるで5が存在しなかったかのようないきなりの至近距離から、改めて一家と戦うので驚いてしまう。なんだそりゃ。むしろ3、4、5を削って

1)白昼いきなり怪物登場→大暴れ→姫がさらわれる
2)冴えない一家が怪物の巣を見つけ出し、危機一髪で姫を救出
3)その後、ライフルと火炎瓶と射手の活躍で怪物退治

あるいは

1)白昼いきなり怪物登場→大暴れ→姫がさらわれる
2)冴えない一家が怪物の巣を見つけ、ライフルと火炎瓶と射手の活躍で怪物退治
3)ラスト、ギリギリ危機一髪で姫を救出

という骨格にした方が、ずっと説得力出たと思うんだけど。

あと、これはこの映画に限らず、アクション映画とかチャンバラ映画とか全般についていつも感じることだけど、効果音がやり過ぎで嫌だ。怪物の足音とか。咆哮とか。ロボコップやトイストーリーならチープな効果音も似合うだろうが、どうしてこうもどいつもこいつも同じようにやるのか。ナイフを振り回せば「ビュッ」だとか。あんな音しねーって。テレビの「カワイイ動物バラエティ」みたいな番組でも、シロクマのチビちゃんがよたよた歩く絵柄に重ねて「ピョッ・ピョッ」だとか、エサを食べれば「ペログリシャウッ」とか、いちいちポストペットふうな効果音をつける。やめてくれ。押しつけがましいんだよ。

それと、1で、怪物が走り、人々が逃げ惑うわけだけど、怪物に追い抜かれた人もまだ同じ方向にみんな走ってんの。あり得ないだろう。まあ怪物の画像は後から合成したんだとすると、ある程度は仕方ないのかも知れないが。

さらにどうでもいいことだが、怪獣が食料保管庫に大量の食べカスを吐き出す場面がある。ありゃないんじゃないか。わざわざ確保しておいたエサの上にわざわざ排泄物をまき散らすなんて、アリだってモズだってビーバーだって、そんなことはしない。食べカスなら川に流せばいいじゃん。

と、悪口ばかり書いたが、しかしそれでも、欠点を補って余りあるというのはこういうことを言うのだろうか、けっこう面白かったです。もう言いたいことは書いてしまったので、どこがどう面白かったかくわしいことは省略するけど、さまざまな定型的お約束に、はまってないことから生じる、妙な生々しさがいいと思う。例えば最初にグエムルを発見した群集は、少しの危機感も持たず、まるでタマ川でゴマフアザラシを見つけた人々のようにはしゃぎ、エサを川に投げ込み、与えようとする。おいおい投げ過ぎだろ、というぐらいに投げる。スルメとかソーセージとかスナック菓子とかを投げる。その、漫画版「GANTZ(の初期)」にも通じる「実感の希薄さ」が、ひどく実感的だ。微妙な怪作だが、快作。
[PR]
by nobiox | 2010-07-26 19:41 | ├映画 | Comments(0) |
<< 会田誠『カレー事件』後篇 | フィレオフィッシュ >>