日本の殺人事件の半分以上が親子兄弟夫婦の殺し。
「家族的経営」と「心中」したがる私たち(小田嶋隆)

要旨:亀井静香郵政・金融担当相は「殺人事件の半分以上が親子兄弟夫婦の殺し。こんな国は日本だけだ。人間を人間扱いしないで利益を上げるための道具としてしか扱わなくなったからで、大企業が責任を感じなきゃ駄目だ」と講演(10月5日)で述べた。

だがしかし。日本は殺人事件の発生率そのものが低い。ウィキペディアが引用しているICPOの2002年の統計では「人口10万人あたりの発生率は1.10件で先進国の中ではアイルランドと並んで最も低い」。ちなみにロシア22.21件、イギリスが18.51件、スイス18.45件、アメリカ5.61件、イタリア3.75件、フランス3.64件、オーストラリア3.62件、ドイツで3.08件、スウェーデン1.87件。

また、殺人事件の発生件数は、戦後ほぼ一貫して減っている。たとえば昭和三十年代と比べると、人口十万人あたりの殺人発生件数はずっと少ない。一方、殺人の総件数のうちにしめる家族内殺人の比率はほぼ横ばいで、つまり、家族内殺人も件数としては減っている。

それと、亀井静香が企業の金儲け主義を批判しつつ金儲け主義に対置したいのはたぶん「古き良き家族主義的経営」だろうが、家族主義的経営なんてものは亀井静香が考えているほど素敵なものではなく、オレ(小田嶋)に言わせればむしろ気味の悪いものである。

日本において家族内殺人の比率が高いこと自体は事実なんだが、もしかするとそれは、心中とか無理心中とかを美化したり過剰に情状を酌量する日本独特の異常な思考パターンと関係あるんじゃないか。

この記事には家族的経営の話や心中の話や太宰治の話が書いてあるけど、この記事中のいちばん優れた指摘は、殺人事件の半分以上が家族殺しだと言うが日本は殺人事件自体が少ないんだよという、つまり「数字の嘘」「統計の嘘」の部分じゃなかろうか。小田嶋隆はいつも、いろんなことを書き過ぎる。それにしても殺人事件がロシアで多いというのはなんとなく(ロシア人には申し訳ないけど)納得してしまうが、イギリス、スイスの高さは意外ですね。

ところで心中というのはどうも、別に日本独特の現象ではないようだ。小田嶋隆のこの記事についたコメントの中に

「一家無理心中」を表す英単語に"familicide"があります。これについては町山智浩さんが「ニューズウィーク」(2009.6.3付け)で「不況下で増える悲しい「ファミリサイド」」というコラムを書いていらっしゃいます。わたしもこのコラムを読むまで一家無理心中は日本人特有の心性だとずっと思っていたので、「目からウロコ」でした。

というのがあった。WikipediaのFamilicideの項目には、無理心中はアメリカにおいて「most common form of mass killings」だと書いてある。

またWikipediaによるとオーストリア皇太子ルドルフ(Kronprinz Rudolf, 1858年8月21日 - 1889年1月30日)の死の真相は今もなお謎で、「はじめは『心臓発作』として報道されたが、じきに『情死』『心中』としてヨーロッパ中に伝わり、様々な憶測を呼んだ」だそうだ。真相がなんであれ、「情死」「心中」としてヨーロッパ中に伝わったのだとしたら、ヨーロッパ人にもそういう概念はある、ということだろう。「ロミオとジュリエット」だって、あれは無理心中の話ではないし、心中の話でもないけれど、愛する人が死んでしまったので自分も自殺するという話なんだから、心中のメンタリティに割と近いのではなかろうか。また、LiveDoorNews でこういう記事を見つけた。

2009年7月7日、日本華字紙・中文導報によると、この1週間で中国人刺殺事件、心中事件などが続いて起こっている。
6日午前5時10分ごろ、広島県廿日市市阿品台西の県営廿日市住宅に住む中国人の崔宝亮(ツイ・バオリャン)容疑者(38)が、妻の劉麗美(リウ・リーメイ)さん(38)、定時制の県立工業高校1年の長男(15)の2人と無理心中を図ったとみられる事件が起こった。妻の劉さんは数か所を刺されて死亡、長男も数か所を刺されて意識不明の重体。現行犯逮捕された崔容疑者も、約2時間後に死亡した。3人はともに中国籍で、2000年8月から同住宅で生活していたという。
 また、6月30日深夜0時ごろ、埼玉県戸田市喜沢1のアパート「松江ハイツ」で、中国人の派遣会社員・陳春姫(チェン・チュンジー)さん(28)が、胸や腕など数か所を刃物で刺され死亡する事件が起こった。同8時15分ごろには現場近くの川で陳さんの夫・全太煥(チュエン・タイホアン)さん(28)の死体が発見された。29日午後9時ごろ、2人の自宅で激しい口論の声を聞いたとの証言もあるという。2人はともに中国吉林省の出身で、朝鮮族とみられる。陳さんは02年4月に留学生として来日、全さんは07年に陳さんに身を寄せる形で来日した。
 01年7月25日には、名古屋市西区又穂町2の又穂団地で、中国人夫婦の飛び降り事件が起き、夫婦ともに死亡。03年3月2日にも、大阪市此花区伝法1の私営伝法住宅で中国人女性の死亡事件があった。(翻訳・編集/津野尾)

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by nobiox | 2009-10-19 17:26 | ├読書日記 |
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