「蛇イチゴ」
原案,脚本,監督:西川美和 / 出演:宮迫博之,つみきみほ,平泉成,大谷直子,手塚とおる / 2002年
★★★★★…めちゃくちゃおもしろかった

「ゆれる」ほどの評判じゃないのでそれほど期待せずに観たんだが、こりゃ凄い。面白い。これが28歳のデビュー作なのか。スゲー。びっくり。「ゆれる」だって少なくとも「スター・ウォーズ」や「ダイ・ハード」や「ジュラシック・パーク」よりもはるかに面白いけど、じゃあ「ローマの休日」並に面白いのか、と言われたら、いや、さすがにそこまでは・・・と思う。しかし「蛇イチゴ」についてはそういう留保はない。紛れもなく「オレが生涯で観た映画のうちのベスト100」に入る。オレが生涯に100本も映画を観るかどうかはわからないが。

まず話が、まあべつに画期的な新機軸ではなく、ありがちなお話だが、面白い。人ってね、100%の善意とか100%の悪意って、そうそうないと思うんですよ。自分のこと考えても、善意のつもりだったけど、よく考えるとウラのウラのウラに1%の悪意が混じってたのかなー、って思ったりとかね、みんなそういうグレーゾーンで生きてると思うんですよ。そういうところを描きたいな、と。西川美和はNHKの「トップランナー」でそんなことを語っていた。まさにその通りのお話。

その通りのお話だとしても、同じ話でも語り手次第で面白く聞こえたりどうでもいい話に聞こえたりするものだ。この話をどういう順序で語ろうかという設計図、つまり脚本が素晴らしい。さらに、どんなに素晴らしい脚本でも撮り手次第でぜんぜん違う映画になる、のか、ならないのか、私は知らんけど、何かが素晴らしい。この、「何か」とは、何でしょうね。カット割りのリズム? 構図? ボンクラな私にはよくわからないんだが、観てて何故だか気持ちいい。小津安二郎みたいというか。いや自分で言ってて自信ないけど。

カット割だの構図だのを語れるほど映画通じゃないんだが、そういう素人の感想としても、キャスティングと演出がキマッている。宮迫博之という人は芸達者な部分が目立って何の役をやってもいつもどこかがわざとらしい。NHK特集「沸騰都市」のナレーションもわざとらしい。と、思うんだが、その宮迫博之が「わざとらしい、いんちき臭い、すべてが信用できない、如才ない、どんなピンチも口八丁で平然と乗り切る詐欺師」の役で、ものの見事にハマっている。阿部サダヲふうなインチキ臭さというか。「イケメンとして定評あるが何の役をやらせても台詞は棒読み」の速水もこみちにロボットの役をやらせたらバッチリだった、という故事を思い出した(速水もこみちがロボットの役をやったドラマと「蛇イチゴ」のどっちが先かは知らない)。

手塚とおるは登場シーンは多くはないが、強烈。先日コメント欄で教えてもらった通り、ほんとうに気持ち悪くて、面白い。素晴らしい。先日「ふつうに『味のある役者』」になっただなんてトンチンカンなことを書いてしまって申し訳なかった。やはり怪物だ。モンスター・ペアレントとかモンスター・ペイシェントという言葉があるが、この映画での手塚とおるは、何だろう、「モンスター・フィアンセ」か。

「紀子の食卓」では孤独なおっさん役で出てたけど、カメラ目線で長台詞をえんえんと語る「喫茶店の男(古屋兎丸という漫画家がやってた)」こそ手塚とおるにやらせるべきだったのではなかろうか。
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by nobiox | 2009-07-14 19:06 | ├映画 | Comments(2) |
Commented by 柳生 博 at 2009-07-20 05:24 x
蛇イチゴ、 nobioxさんの趣味にも合ったようで嬉しいです。

西川美和監督の、28歳のデビュー作という点でも凄いですが、
僕にとっては、手塚とおるの怪演はそれ以上の衝撃でした。
Commented by nobiox at 2009-07-25 15:38
これを観れたのは柳生さんのコメントのおかげです。感謝感謝です。
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